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その21 ネット依存、スマホ依存

コロナ禍で遠隔勤務や遠隔診療、そして遠隔コミュニケーションがより広く、より頻繁に行われるようになりました。これまでにコンピューター技術やインターネットがすでに普及していたので、遠隔勤務などにもスムーズに移行できたのだと思います。実際に職場や会議の場に集まらなくても仕事や意思の疎通ができるようになったのは便利で良いことでしょうが、反面パソコンやスマホに頼ってしまい、極端な場合にはネット依存やスマホ依存といった弊害が懸念されます。

たとえば私たち医師の仕事も電子カルテが導入されてからは、日々の診療記録、検査結果、他の病院などとの情報交換など業務全般について、すっかり電子カルテに依存しきっています。もしパソコンや通信システムに何か問題がおこって作動しなくなると、全くのお手上げ状態になってしまいます。それは他の業種でも同じようで、ニュースでも銀行のシステム障害でATMからお金が出せなくなったり、新幹線の運行管理システムの障害で列車のスムーズな運行が一時的にできなくなったりなど報道されたことがあります。
 個人レベルでもスマホがいつも手元にある状態に慣れてしまっているので、出かける際にスマホを忘れてしまったりすると、一挙に不安に襲われます。短時間でも「何か連絡があったらどうしよう」「もし出先でトラブルが起きたら連絡できない」など、とても頼りなく感じてしまいます。けれどもよく考えてみれば、以前はスマホなしの生活で不自由なく普通に暮らせていたのだから、大抵は問題ないはずです。あまりにもスマホが身近にあることに慣れきっているせいで、一時的にでも手元にない状態になると過剰反応してしまう傾向があるようです。

それでは、ネット依存やスマホ依存と呼ばれるような病的な状態は、具体的にはどのようなことでしょうか。ネット依存とは、1990年代半ばにアメリカで提唱された言葉で、インターネットのヘビーユーザーに自制不能や禁断症状、実生活上への悪影響や現実からの逃避など、ギャンブルやアルコールの中毒と同様の症状をきたしていることが報告されました。1996年にアメリカの心理学者ヤング氏は「ネット中毒の8項目基準」を発表しました※1。8項目には、「ネットの利用時間をコントロールしようと思ってもうまくいかない」「ネット利用を抑えようとするとイライラする」「ネットのせいで家族・友人との関係が損なわれたり、仕事や勉強がおろそかになりそうになっている」などの項目があり、5項目以上該当すれば「依存傾向あり」と判定されます。
 日本でも大学生について調査したある研究では、スマートフォンを持っている学生のうち約50%にスマホ依存傾向があることが報告されました※2。さらにスマホ依存傾向のある学生は、スマホ使用時間がより長く、食事中や授業中などにも使用している割合が高く見られました。生活習慣の特徴としては、起床時間が遅くなったり、睡眠の充足度が低くなったりする傾向がありました。

日本で現在スマホ依存が問題になっているのは主に学生など若い人々ですが、今後はスマホユーザーが高齢化してくることが予想されるので、私は将来、中高年層にもスマホ依存が広がってくるのではと予想します。それを予防するためには、スマホ依存の治療法のひとつである、認知行動療法がヒントになると思われます。
 認知行動療法では、まずどれだけの時間ネットやスマホを使っているか記録し、実生活のほかの時間が妨げられているかなどについて本人に気づかせます。スマホ依存による弊害に本人が気づくことが大事で、次に解決策を考え、実行していくことができるという治療法です。
 この方法を予防に使うとすれば、自分自身がネットやスマホを何のために、いつ、どれだけ使うかというマイルールを明らかにしておくことが大事だと思います。たとえば、仕事や勉強などに必要なもの以外に、「時間つぶし」や「ストレス解消」などのためにSNSやゲームを使っているとしたら、その使用目的に見合った時間そして時間帯に限って使うようにして、日常生活に支障が出ない程度に適正に使用していくように心がけましょう。治療でも予防でもセルフコントロールがキモだと思います。


※1:ネット依存の現状と課題-SNS依存を中心として 橋元良明 ストレス科学研究 33:10-14, 2018
※2:大学生のスマートフォン使用におけるインターネット依存傾向と生活習慣との関係 稲嶋修一郎ら 人間発達学研究 10:1-10, 2019

(2021/05/05 18:21:19)

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