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時をかけるおばあさんたちTime Travelling Old Ladies

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その8 デイサービスに行く?行かない?

お正月明けにテレビで、「認知症の第一人者が認知症になった」という番組を見ました。日本の認知症医療の第一人者で、長谷川式認知症スケールの考案者として広く知られている、長谷川和夫先生が認知症になったというのは、私も新聞記事などで読んで知っていました。

番組を見て強く印象に残ったのは、長谷川先生がデイサービスに参加する場面です。憮然とした表情で、ただ座っているだけ。ほとんど無言です。デイサービスが終わって家に帰って来てから、「何がしたいかということを聞いて欲しい」とおっしゃっていました。したくもないゲームなどに参加させられるのが、苦痛だったようです。長谷川先生も、医者として認知症の患者を診ていた時は、デイサービスに参加することを患者や家族に積極的に勧めていました。そして、自分がデイサービスに行くのも、一日中介護を担っている奥さんの負担を軽減するため、というふうに理解されています。それでも本音を言えば、自分がデイサービスに参加するのは嫌なようです。家にいたり、行きつけの喫茶店に娘さんに連れて行ってもらったりする方がずっと良いようでした。

うちのクリニックの高齢の患者さんでデイサービスが好きな方は、話好きの女性の方が多いようです。診察時にも、「デイサービスでお友達ができて楽しい」「ヒノキのお風呂に入れるのが良いです」などと教えてくれ、行くのを楽しみにしている様子です。一方、デイサービスに行きたくないという方もたくさんいます。本人にどうして行きたくないのか尋ねると、「私には必要ない」「気が進まない」という答えだったり、何も答えず俯いていたりします。娘さんや息子さんの話では、「母は非社交的だから」「人付き合いが苦手なので」などという答えです。娯楽として何がしたいか聞いてみても、「何もしたくない」「家にいたい」と言う人も多いでしょう。

デイサービスは、通所介護と呼ばれる介護サービスの種類のひとつです。日帰りでデイサービスセンターや施設などへの送り迎えがあり、半日のサービスと1日のサービスがあります。家で閉じこもりがちな高齢者を外に連れ出して、より健康的に過ごしてもらうという側面と、高齢者の家族に休息を与えるという側面があります。デイサービスの基本的な業務内容は、健康状態の確認および管理、食事摂取や水分補給、そして入浴や排せつの世話などの日常的な生活のケアです。それ以外に、リハビリや体操をしたり、絵を描いたり歌を歌ったりなどの娯楽の時間もあります。デイサービスでは要支援度や要介護度、そして認知機能がさまざまな高齢者が集まって来るので、娯楽も、最大公約数的な、みんなができるだけ楽しめるようなものになります。具体的には、簡単なクイズや懐メロを歌ったり、塗り絵や簡単なクラフトワークなどです。家で一人寂しく過ごしている方などは楽しんで参加されることも多いですが、技術や専門性の高い仕事を長年されていた方などには物足りなく感じられることもあるでしょう。

高齢者のご家族は、デイサービスで安全に楽しく過ごしてもらえれば、と思っています。高齢者の方も、認知症がある程度進んでいたり、入浴や排せつなどに介護が必要な状態の場合には、比較的スムーズにデイサービスを受け入れているようです。介護度が低い、そして知的レベルの高い仕事や生活をしてきた方は、たとえ認知症が多少進んでも、デイサービスの娯楽は自分には合わないと思われるようです。日常生活に必要なわけではなく、本人も行きたくないのであれば、私は、そういう時に無理にデイサービスに行かなくても良いと思います。さらに時が経てば、高齢者の自然経過として、次第に心身ともに衰えたり介助が必要になったりして、デイサービスに行くことに違和感がなくなることが結構あります。

ここからは私の空想ですが、たとえば一人に一台、見守りロボットまたは介護ロボットがいて、やりたいこと、好きなことの相手をしてくれると良いなあ、と思います。もし、ロボットが、その高齢者の今までの人生のさまざまな出来事、写真やビデオをメモリーに蓄え、好きなこと・嫌いなことを把握し、タイミング良く好きな音楽や映像を流してくれたら、どうでしょうか。もし、しゃべりかけたら相槌を打ってくれたり、好きそうな話題を提供してくれたら、楽しいひとときが過ごせるのではないでしょうか。もし、時間を見計らって食事や散歩、体操などを適切に促してくれたら、良い気分転換になることでしょう。もちろんセキュリティカメラが付いていて、転倒した場合などには家族に知らせてくれるでしょう。今のAIやIT技術の発展の著しさを考えると、こんなロボットも近いうちに夢物語でなくなるかも知れません。

※ NHKスペシャル 認知症の第一人者が認知症になった 2020年1月11日放送

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