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その9 美味しい!フリーズドライスープ

新型コロナウイルス感染症が長引くにつれて、外出制限が次第に厳しくなり、食料の備蓄の機運が高まっています。インスタントラーメンなどは、簡単に作れるので人気があり、近くのスーパーでは一度に購入できる数が制限されています。そのほかに長期保存できる食料というと、お米、缶詰、乾麺、そしてレトルト食品などが挙げられます。これらの食品は普段から食べる機会があるので、特に目新しく感じられません。

今回、私は、スーパーでフリーズドライの野菜スープを見つけ、初めて購入してみました。フリーズドライというと、昔、携帯用の離乳食を買って、子供たちに食べさせた記憶があります。軽いので、旅行などの際に持ち運びに便利でした。但し、自分で味見をしなかったので、味のほどは分かりません。カップヌードルの中の具材もフリーズドライのようですが、これまでは、わき役にはなっても主役が務まるようには思っていませんでした。さて、買ってきた野菜スープを早速試してみました。お湯をかけて混ぜると、固形のフリーズドライスープがすぐ溶けて、とても便利です。スープの具の野菜も、私が思っていたより大きく、溶き卵風の卵もフワフワとスープに浮かび、味や食感も満足のいくものでした。レストランでランチセットに付いて来るスープよりも、余程美味しく感じられました。調べてみると、お勧めのフリーズドライフードとして、スープやみそ汁のほかに、ピラフや雑炊、そしてパスタなどもあるようです。

フリーズドライとは、真空冷凍乾燥法という食材加工法のことを指します※1。まず、マイナス30度で食材を冷凍したあと、真空冷結乾燥機という機械に入れて真空状態にします。食材の中の水分は、真空状態では、氷の状態から一気に気体になって蒸発するという現象が起こります。その現象を利用して、食材を乾燥させる加工法です。乾燥した食材は、もと水分が入っていた部分が空洞になりますが、お湯を注ぐとその空洞を満たし、元の姿に戻り、食べられるようになります。フリーズドライ食品は、常温で長期保存ができ、加工過程で熱を加えないので栄養価の損失が少なく、味や香りの変化も少ないという利点があります。軽くて携帯に適するので、登山食や宇宙食にも使用されているそうです。自分がヒマラヤの頂上や宇宙の真空空間で、フリーズドライスープを飲んでいる情景を思い浮かべると、壮大な気分になって、外出制限で腐りかけていた気分が少し明るくなります。

さて、フリーズドライの技術は、食用だけではなく、他の目的にも使用されています。輸血用の血小板は、温度変動に弱く保存期間が数日程度と短いのですが、フリーズドライ技術を応用することによって長期保存が可能となるそうです。また、精子や卵子もフリーズドライによって長期保存することができるようになり、水でもとに戻すと生殖が可能な状態になるそうです※2。実際にフリーズドライで長期保存された精子を使って、マウスやラットが誕生しており、しかも生殖能力を保っていることが証明されています。精子や卵子は、冷凍保存が可能なことは良く知られていますが、フリーズドライでも長期保存が可能であれば、より手軽に保存できて良いでしょう。人間の精子や卵子でもフリーズドライできるかどうか、気になるところです。


※1:とっても身近なフリーズドライ食品
※2:Long-term preservation of freeze-dried mouse spermatozoa. T Kaneko, T Serikawa, Cryobiology Vol. 64(3) 211-214, 2012

(2020/04/17 06:47:14)

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