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その25 動物と人間のあいだ

1か月ほど前のある日、うちの郵便受けに1枚の手作りチラシが入っていました。それは、飼い猫が行方不明になったという内容で、「いなくなった猫は家族の一員です。見かけたらどうぞ連絡して下さい」ということでした。私の家でも犬を2匹飼っていて家族同様に思っているので、その大切さはよく分かります。

うちで飼っているワンコは2匹とも高齢でそれぞれ病気があるので、薬を飲ませたり食事を手作りにするなど、かなり手間がかかります。朝夕散歩に連れて行き、食事に手間暇かけ、動物病院にも定期的に通い・・・私は自分のことをかなりの動物好き、犬好きだと自負していました。ところが今回、「北里大学獣医学部犬部!」というノンフィクションの本を読んで、上には上がいるものだと実感しました。
 この本は、題名通り、北里大学獣医学部にある「犬部」というサークルの話です※1。獣医学部の学生、つまり獣医さんのタマゴたちが、捨て犬や飼えなくなった犬を引き取り、新しい飼い主が見つかるまでの間それぞれの犬の世話をします。彼らが引き取る犬は病気や障害があったり、虐待を受けて人間不信だったりするので、扱いにくいことが多いようです。それでも学生たちはそれぞれの犬を「カワイイ」と大切にして、工夫しながらケアをします。部屋を糞尿で汚されても「おかげで床掃除ができてきれいになった」というのが彼らの感想で、あっぱれと言うしかありません。試験や実家への里帰りなど、自分のほかの生活はもちろん後回しになります。犬たちは体調が整い、人に飼われることに慣れると、譲渡会で新しい飼い主を見つけます、いや飼い主に見つけてもらいます。もし飼い主が見つからなければ、・・・学生たちは自分で飼うことになるだろうという覚悟も決めているようです。
 ペット動物は可愛いし、動物愛護は誰でも正しいこと、するべきことと考えますが、それを実践すること、そして最後まで責任を持つことは生易しいことばかりではありません。

また、私は動物をテーマにした映画も好きですが、今回「おおかみ子供の雨と雪」というアニメーション映画を観ました。細田守監督のこの映画は、大学生の女の子がおおかみ男と知り合い、恋人同士になるところから始まります※2。彼らはやがて結婚して、2人の子供ができます。おおかみ男は、普段は人間の姿で言葉も普通にしゃべりますが、時々おおかみに変身して野生に戻ります。彼はある日家に帰って来なくなり、川辺でおおかみの姿で死んでいました。そしてその死体はゴミ収集車に回収されて行ってしまいます。犬を飼っている私にとってはとても胸が痛むシーンでしたが、動物の死骸は法的にはモノ扱いになってしまうのでしょう。
 さて、おおかみこどもの2人は姉と弟ですが、やはり普段は人間の子供で、興奮したりするとおおかみの姿になってじゃれあいます。成長するにつれ、姉は人間として、弟はおおかみとして生きていくことを選び、家を後にします。早すぎる親離れとなり母親の心情を思うと切ないですが、それぞれ自分たちで成長していく子供たちを尊重し、遠くで思い遣るしかありません。これは人間の子供でも同じことです。

私がその次に観たのは「野生のエルザ」の映画です。これは赤ちゃんライオンを人の手で育て、野生に戻すまでのノンフィクションの本を基にしています※3。ケニアで野生動物保護区の管理官をしているイギリス人の夫婦が、親を亡くしたライオンの赤ちゃん3匹を育て始めます。赤ちゃんライオンがじゃれ合ったり身体を寄せて眠ったりする姿はとても愛らしいのですが、やはり猛獣なのでいつまでも飼うわけにはいきません。動物園に引き取られるか、野生に戻すかです。2匹は動物園に引き取られ、1匹は離れがたくてぎりぎりまで手元に置いてしまいます。その後夫婦は少しずつエルザを野生の生活に慣れさせ、他の動物を狩ることも覚えさせ、最後にライオンは野生に帰って行きます。

さて、最初のチラシから1週間あまりがすぎ、郵便受けに2枚目のチラシが入っていました。それは、迷子猫は見つかり、無事飼い主のもとに戻されたというお知らせで、私もほっとしました。動物と人間のかかわり方を考えさせられた日々でした。


※1:「北里大学獣医学部犬部!」 片野ゆか著 ポプラ文庫 2012
※2:おおかみこどもの雨と雪 東宝 2012
※3:Born Free(邦題 野生のエルザ) Columbia Pictures Industries Inc. 1966

(2021/09/08 13:35:17)

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