メディカルミッション

日常生活のほっとアクセントA Hotto Accent in Everyday Lifefollow us in feedly

 過去ログを読む(クリック)

その23 『認知症のリアル』出版しました!

今回、このブログシリーズで書いている3種類の私のエッセイを本にまとめて出版する運びとなりました。最初のシリーズ「時をかけるおばあさんたち」では、高齢者診療に関して私が経験したことや感じたことを紹介しました。高齢者、特に在宅診療をしていたり施設に入居している高齢者では、医療だけではなく介護も必要であったりするので、一般成人の病気の診療とはいろいろな面で違いがあります。病気の種類も違うし、コントロールする目標も違ってきます。その上に高齢になればなるほど認知症の問題も避けて通れなくなります。高齢による衰え‐いわゆる老化‐と認知症の進行が、治療や日常生活のケアをより複雑により困難にするので、途方に暮れてしまう家族も多いと思います。けれども認知症がある人たちも、それぞれ本来の気性や好みがあります。家族やケアを担う人々もその高齢者の人生の最期の期間だと自覚し、お互いの生活が成り立つように上手に付き合っていって欲しいと思います。
 2番目のシリーズ「やっぱり健康がいちばん!」では、アラカン世代の私が日常生活で健康に気を付けたり、ちょっとした不具合をケアするヒントにつき、まとめたり調べたりしたことを書きました。この世代は、20年後、30年後には自分たちの親世代のようになるわけです。残された人生をできるだけ快適に過ごすためには、長期間の健康の維持を、運動なども取り入れながら楽しんで実践することがお勧めです。そして最後の「ほっとアクセント」では、仕事や子育て、もろもろのやらねばならないことの合間には、ほっと一息つきましょう。生活を楽しむことも人生の大きな目標です。生活を彩る余暇の過ごし方などに焦点を当てました。最初の頃は、旅行や食べ歩きなどを計画していましたが、新型コロナウイルスがパンデミックとなり、楽しみの話題も身近で地味なことになりました。

さて、製本にまとめた私の最初の心づもりとしては、単に知り合いの人々に渡して読んでもらうつもりでした。家族や親せき、医療や介護の仕事関係や、かかりつけ患者やその家族などです。けれども出版先の幻冬舎ルネッサンス新社さんのご協力で、一般の書店にも少しですが並ぶ予定です。また、電子書籍でも出版されることになりました。これを機会により多くの人々に、認知症の実際、高齢者診療や介護、またシニアになった子供世代の方々の健康のヒントや余暇の過ごし方など、参考にしてもらえると嬉しいと思います。

私のエッセイの書き方ですが、最初は思いつくままに書き綴っていました。文章の長さもその時まかせだったので、興が乗って筆が滑ると長くなったり、話題が簡単に終わると短くなったりしました。毎月1回書くようになってからは、同じくらいの長さになるように調整しています。私の文章をまとめるやり方も定着してきました。まずA4の紙1枚に、エッセイのテーマと思いついたことをいくつかメモして、話題をどうまとめるかについて考えます。実際に紙に書くことによって、自分の考えがはっきりしたり、話題の方向性が見えてきたりします。場合によってはいろいろな疑問も湧いてくるので、ネットでいろいろと調べたりします。ネットで調べることによって、さらに話題が広がることもあります。
 さて、これらの作業をある程度すると話題が自分の頭の中で熟成されるので、適当なところで文章を書き始めます。すでにある程度方向づけしているので、予定している内容がまとまるはずですが・・・。不思議なことに自分の考えがすんなりまとまることもあれば、もともと考えていなかった方向に筆が進むこともあります。違う方向に話が進む場合には、「あっ、潜在意識ではそう考えていたかも」と感心する場合もあれば、「違う違う、それは私の考えじゃないよ」と取り消す場合もあります。自分探しのような、森で迷子になってしまうような、楽しい場合もあれば頼りない場合もあります。

そこで、名だたる文豪からのエピソードをふたつ思い出しました。ひとつは、司馬遼太郎が「竜馬がゆく」を書いた際のインタビューで読んだ話です。実は坂本竜馬が毎晩酒を携えては司馬氏のところにやって来て、飲みながら土佐弁で今までにあったことを得々としゃべるそうです。そして竜馬から聞いた話を司馬氏はただそのまま書き綴って小説ができた、という逸話です。もうひとつは、夏目漱石の「夢十夜」にある運慶の話です。ある夜の夢に出てきたのは、歴史的に有名な仏師運慶でした。彼は、自分の仕事は木の中に埋もれている仏像をただ彫りだすだけだ、というのです。でも主人公がそんなものかと思って木を彫っても、仏様は現れないという話でした※1。ああ、手を動かすだけで自然に頭の中にあるものが表現されれば、どんなに楽でしょうか。と思う一方では、もしそうだとすると、なにか目に見えない力に動かされているようでちょっと怖い気もしますが。


※1:夢十夜 夏目漱石

(2021/07/04 18:23:40)

ご意見・ご感想

皆様のご意見・ご感想をお寄せください。

ページトップへ戻る