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その6 新・ウォーキングの常識

普通の生活の中で一番手軽にできる運動は、歩くこと、すなわちウォーキングです。毎朝、私は犬を連れて散歩をしますが、年配の男性や女性が一人で歩いていたり、夫婦で歩いていたりするのをよく見かけます。実は私も、腕時計型の歩数計を持っていて、毎日使っています。歩数計は、以前「万歩計」とも呼ばれていたように、健康のためには1日1万歩歩くことが勧められていました。調べてみると、前回の東京オリンピックの翌年、1965年に、日本万歩クラブというものも発足し、「1日1万歩」の普及や実践を行ってきたようです。その団体のホームページでは、「健康を維持するためには、1日300キロカロリーを運動で消費することが大切で、1万歩を歩けば、それが実現できる」と記されています※1。
ところが今年、国際的に影響力が強い医学雑誌JAMAに、1日1万歩も歩く必要はない、という記事が出ました※2。この調査では、平均年齢72歳の女性のグループ16,000人を1日の平均歩数によって4つのグループに分け、4年余りの間の致死率を比べました。すると、1日により多く歩いたグループの方が致死率が低いという結果が出ました。しかし、その延命効果は7,500歩までは歩数に比例していましたが、それ以上の歩数では変わりはなかったということです。
最近、日本でも調査や研究が行われた結果、歩数を多く歩くよりは、少し強度の強い速歩などを取り入れて、「量より質」の歩き方が推奨されています。東京都健康長寿医療センターの青栁幸利氏は、「病気にならない歩き方の黄金律は、8,000歩+中強度20分」であると提唱しています※3。これは、1日8,000歩歩き、そのうち20分間は中強度の歩きをする、ということです。中強度の歩きとは、「なんとか会話できる程度の速歩き」のことで、運動強度を高めることによって、骨や筋肉に適度な刺激を与え、骨密度や筋肉量の低下や体温の低下を防ぐことができるからだそうです。彼によれば、運動をやりすぎると免疫力が低下するなどの障害が出るリスクがあるとのことです。
同様に、信州大学医学部の能勢博氏も、ウォーキングに早歩きを取り入れるべきだと勧めています。彼は、1日1万歩歩いた人のデータを集め、その効果を調べたところ、顕著なものは見つかりませんでした。そこで、体力を向上させるためには、運動強度を強めるべきであるという結論に達しました。ジムで機械を使ってトレーニングするのが正統的ですが、普段のウォーキングを工夫しても同様の効果が得られるということです。彼は、早歩きを3分間と普通歩きを3分間を繰り返す「インターバル速歩」を勧めており、週に早歩きを合計1時間する、または相当する強さの運動をすると体力が向上すると結論付けています※4。
※1:日本万歩クラブ
※2:J Abbasi, For mortality, busting the myth of 10000 steps per day, JAMA. 322(6):492-493, 2019.
※3:「1日1万歩」は間違い?5000人研究で判明! 日経ビジネス 2016年9月7日
※4:ウォーキングの科学 能勢博 ブルーバックス 株式会社講談社 2019年
(2020/01/17 06:14:22)