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その31 ロコモティブシンドロームとその予防・対策
最近よく耳にするようになった「ロコモティブシンドローム(略してロコモ)」とは、「運動器の障害のために移動機能の低下をきたした状態」を言います※1。運動器とは、骨・筋肉・関節・神経などの体を動かすことに関わる組織や器官のことです。これら運動器に障害があると、移動がスムーズに行われず、転倒や外傷・骨折などをきたすリスクが高くなります。そしてその結果として、移動を含む日常動作に介護が必要になることがしばしばあります。
ロコモの推定人口は、予備軍も含めて4,700万人と言われています※2。この人数の多さには驚くばかりです。そして特に関係が深い疾患としては、高齢者に多い膝、腰、骨の病気、すなわち変形性膝関節症、変形性腰椎症、骨粗鬆症などがあります。
まず、ロコモかどうかをチェックするための「ロコモ度テスト」があるので、早速調べてみました。このテストは、①立ち上がりテスト、②2ステップテスト、そして③ロコモ25という質問票からなり、その結果によってロコモ度が判定されます※2。
立ち上がりテストは、まず高さ40cmの台または椅子から立ち上がるテストです。両脚と片脚で行います。両腕は胸の前でクロスし、反動をつけずに行います。私が試してみると、両脚では特に問題なくできますが、片脚でやるのは難しいようです。立ち上がる際に重心を片脚に乗せるのが難しいパートです。私は何度か試みて、やっとできるようになりました。片脚で立ち上がれない場合には、さらに低い台で両脚で立ち上がることを試みて、ロコモ度1、2、3を決定します。
2ステップテストは、できるだけ大きな歩幅で2歩前に進み、その距離を測って身長の何倍あるか計算します。1.3以上あればオーケー、なければロコモです。私の場合は、かなり頑張って大股で歩いて、何とかパスしました。
ロコモ25はアンケート様式になっています。四肢や体幹のどこかに痛みがあるか、いろいろな日常生活動作が困難かにつき尋ねられ、それぞれの程度を回答します。具体的には、上肢、体幹、下肢のどこかに痛み(またはしびれ)があるかどうか、痛みがある場合には、どの程度か(少し、中程度、かなり、ひどく)を答えます。日常生活動作では、ベッドから起きたり、椅子から立ち上がる際の困難さ、家の中を歩いたり、急ぎ足で歩いたりする際の困難さにつき、困難かどうかとどの程度困難か(困難でない、少し困難、中程度困難、かなり困難、ひどく困難)を答えます。25問の問いがあり、答えによって点数がつき、ロコモ度が決まります。痛い部位があったり、日常生活動作が困難であれば、点数が高くなり、ロコモ度が付きます。
これらロコモ度テストの結果、どのくらいの人がロコモと診断されるのでしょうか。2012年から2013年に実施されたある調査では、1,500人ほどの地域在住一般住民にロコモ度テストを行い、ロコモ度1の該当者は全体の69.8%(男性68.4%、女性70.5%)だったそうです※3。年齢が上がるとともに割合も増えますが、60歳代では、男性の67.4%、女性の69.5%がロコモ度1でした。このデータを元に推計すると、40歳以上の68%がロコモ度1に該当する、という驚くべき数値でした。ところが、2020年に発表された別の調査では、半分以上の人がロコモ度1以上となるのは、男女どちらも75歳以上のグループで、60歳代では30-40%台という低い値でした。この後者の調査は、対象者を「歩行に他者の介助を必要とせず、運動器疾患の治療中でない地域在住者8,681人」としているので、関節や骨の病気を除外しているからかも知れません。
さて、日本整形外科学会では、ロコモ対象者にロコモーショントレーニング(ロコトレ)を推奨しています。ロコトレの具体的な内容は、開眼片足立ちとスクワットで、さらに踵上げの運動なども勧めています。果たしてロコトレはロコモの改善効果があるのでしょうか。ロコモのある地域高齢女性12人に6か月間ロコトレを行ってもらった結果では、11人が「ロコトレは楽しかった」と答え、10人が「膝・腰・体のいずれかが良くなった」と答えました。運動機能検査でも改善が見られたという結果でした※4。
膝や腰の関節や骨に疾患がある高齢者では、高率でロコモになり、要介護になるコースをたどるであろうことは容易に想像されます。もっと前の段階で、これらの疾患がない、または軽いうちから、適切で効果的なロコトレを行うよう心掛けたいものです。
※1:ロコモを知ろう | ロコモONLINE | 日本整形外科学会公式 ロコモティブシンドローム予防啓発公式サイト (locomo-joa.jp)
※2:もっと知ろう!「ロコモティブシンドローム」|公益社団法人 日本整形外科学会 (joa.or.jp)
※3:ロコモの簡易測定法とその頻度 吉村典子 理学療法学 45(5): 342-343, 2018
※4:行動科学の理論に基づいた運動プログラム「ロコトレBBS」の効果 ‐地域高齢女性における運動の継続に関する検討‐ 細井俊希ら 理学療法学 26(4): 511-514, 2011
(2022/06/20 16:17:36)