メディカルミッション

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 過去ログを読む(クリック)
その33 傷の治りとランゲルハンス細胞
その32 味覚障害と嗅覚障害
その31 ロコモティブシンドロームとその予防・対策
その30 私が決める私自身の介護
その29 清水選手『奇跡のレッスン』を見て
その28 健康寿命とシニアの体力テスト
その27 腰痛対策:骨盤を立てて座る
その26 セカンドライフの過ごし方
その25 誰にでも老化は来る
その24 スポーツ時の暑さ対策
その23 マインドフルネス
その22 コロナワクチン接種開始
その21 ネット依存、スマホ依存
その20 体年齢測定のしくみ
その19 目の健康をチェック!
その18 温泉は健康に良い?悪い?
その17 お肌ケア
その16 肩こりのツボマッサージ
その15 西洋医学がだめなら東洋医学はどうですか?
その14 下半身の筋力強化:バレトンがおすすめ
その13 シニアのスポーツ:私の5カ条
その12 インターネットでワークアウト
その11 夢のお告げ または 記憶のフィルタリング
その10 患者へのアドバイスの伝え方
その9 人間の宿命、腰痛とその対策
その8 ニュースとデマと現実と:新型コロナウイルス感染によせて
その7 寝る前ヨガ
その6 新・ウォーキングの常識
その5 ゴルフ肘、テニス肘
その4 良い姿勢の効能
その3 簡単で効果的なダイエット
その2 フットケア、私の場合
その1 体調を崩したあと、改めて健康に感謝!
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その24 スポーツ時の暑さ対策

梅雨明けの猛暑の中、そして新型コロナ感染症拡大中の東京で、ついにオリンピックが開催されました。東京周辺は連日気温30度を超える猛暑が続いており、日中外を歩くだけでも暑さに参りそうです。この炎天下に屋外で行われる競技の選手たちの大変さは想像以上でしょう。早速オリンピックに参加しているテニス選手たちからは、試合の時間帯を遅い時間にずらして欲しいという要望が出ました。IOC(International Olympic Committee、国際オリンピック委員会)の返答は、「十分に暑さ対策を行った上で臨んでいるが、すべての試合の時間で暑い時間を避けることはできなかった」というものでした。それでも選手が希望すれば、テニスの試合中に10分間の休憩を取ることができるようになり、さらに試合時間も変更されました。

運動時には体内の科学的エネルギーが運動エネルギーに変換されるのですが、そのエネルギー効率は20%程度で、残りの80%は熱となります※1。寒い季節であれば身体や筋肉が温まってちょうど良い場合もありますが、猛暑の環境では体温がさらに上がり、運動能力や認知機能が低下してしまいます。一方、身体では体温の上昇を抑えるメカニズムが働き、皮膚血管を拡張したり、汗による水分蒸発による熱放散が起こり、体温を一定に保とうとします。ところが、これらの機序が十分に働かない場合には障害が発生し、熱中症と総称される状態になります。熱中症は重症度の軽い方から、熱失神、熱けいれん、熱疲労、熱射病の4つに分類されています。それぞれ、めまいや失神、けいれんや筋の硬直、疲労感や頭痛・嘔吐、意識障害などの症状が見られる状態を指します。

熱中症の起こりやすさの目安になるのが、暑さ指数です※2。気温が同じでも湿度が高ければ、より暑く不快に感じ、熱中症になりやすくなります。そこで、気温や湿度などを総合した暑さ指数という指標が定められており、その数値が上がれば上がるほど熱中症になるリスクが高くなることが分かっています。たとえば暑さ指数が31度以上と非常に高い場合(気温では35度相当)、運動は原則中止で、28度から31度までは(気温では31度から35度相当)、熱中症の危険性が高いので厳重警戒が必要で、やはり激しい運動は中止することが勧められています。指数がそれ以下の場合には、熱中症を防ぐための暑さ対策として、休憩をしばしば取り水分を十分摂取する、身体を冷やす、暑さに順応するなどがあり、強く推奨されています。

今では信じられない話ですが、昔は運動中に水を飲むことはいけないことだとされていました。現在は、スポーツをする際の水分補給には、のどが渇く前から、そしてこまめに水分を摂取することが勧められています。軽い運動の場合には、水や麦茶などの水分補給だけで良いようです。スポーツ選手が試合中に水分補給をする場合には、スポーツドリンクを飲んでいるのをよく見かけますが、スポーツドリンクには汗で失われるナトリウムやカリウムなどの電解質や糖質が含まれています。強度のスポーツや長時間にわたり汗をかく場合には、やはりスポーツドリンクで補給するのが適切です。但し糖質が結構含まれているので、軽いスポーツ時の使用には、カロリーの取りすぎにならないように注意が必要でしょう。
 身体を冷やして体温が上がりすぎないようにするには、身体の外から冷やす方法と、中から冷やす方法があります。外から冷やす方法は、クーリングベストや最近流行の首にかける携帯扇風機などがあります。クールスカーフなど手軽なものもあり、私も運動時に冷やして首に巻いて使っていますが、2本用意して冷やしながら交代に使えば、長時間快適に過ごせます。身体の中から冷やす方法は、上に挙げた水分を冷やして飲むことも含まれますが、最近アイススラリーと呼ばれるものも登場しています。アイススラリーとは、スポーツドリンクをシャーベット状にしたもので、液体を冷やしただけのものよりさらに体温を下げる効果が大きく、プロスポーツなどでも使われているそうです。

それにしても、夏の風物詩も以前とは様変わりしているようです。地球温暖化の影響もあるのでしょうか。私たちの子供の頃(昭和30年から40年代)には、「うちわ、風鈴、打ち水」が夏を感じさせるものでしたが、今はさしずめ、「エアコン、熱帯夜、スポーツドリンク」でしょうか。


※1:スポーツにおける実践的暑さ対策とその応用 長谷川博 ©NSCA JAPAN 25(6): 2-10, 2018
※2:熱中症予防ガイドブック 日本スポーツ協会 2018

(2021/08/05 14:43:26)

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