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その18 温泉は健康に良い?悪い?
1月も後半になり、毎日真冬の寒さが続くと温泉に入りたくなります。コロナ禍で緊急事態宣言の出ている最中では、出かけることもままなりませんが。さて、温泉は実際健康に良いのでしょうか?
日本人であれば、答えは即座にイエスでしょう。山の中で野生の猿が温泉に浸かっている場面を思い浮かべる人も多いと思います。野生の動物が癒しに来るぐらいだから、人間にも良いに決まっています。温泉に入れば、心と体がゆったりと温まり、心身ともに癒されるイメージです。
ところが、たとえばアメリカ人はそうは思わないようです。彼らは、温泉はもとより浴槽の熱いお湯に浸かる習慣がありません。お風呂も一般的には夕食後ではなく起床後の習慣で、朝にシャワーを浴びて心身を目覚めさせる役割があります。家の中は大抵全館空調なので、日本のように冬場に体を温めないと眠れないということもありません。熱いお風呂というのは、むしろ危険なイメージがあるようです。
私がアメリカで生活をしていた時に驚いたのは、プールの脇にあるジャクジーの但し書きです。それには「大人と一緒でない13歳以下の使用禁止」と書かれていました。ジャクジーは、ボタンを押すと泡が出る浅いお風呂で、お湯もぬるいくらいです。私は、これが危険だったら、温泉は絶対ダメだろうなあ、と思いました。
案の定、英語でホットバス(熱いお風呂)を調べると、危険な理由が次々と出てきます。まず、床が濡れているので滑りやすく、転倒の危険がある。次に血圧が下がるので、めまいや転倒の危険がある。体温が急に変動し、のぼせたり、嘔気・嘔吐の危険がある、等々。
実際、日本でも熱いお風呂に入ることにはさまざまな危険が伴います※1。特に高齢者の入浴事故はしばしば見られます。お風呂場で滑ったり尻もちをついてケガをしたり、場合によっては転倒して骨折したりする事故が起こりえます。また、入浴前後で血圧の変動が大きくなり、めまいやふらつきで気分が悪くなったりします。特に一人で熱いお風呂に長いこと浸かっていると、ボーっとして意識障害を来したり、おぼれることさえあります。厚労省によると、2015年に日本全国で入浴中に急死した人数は約1万9千人もいるそうです。一方同年の交通事故死は4千人程度なので、入浴の危険性は普段私たちが思っているよりはるかに重大なようです。
これらのリスクを十分に理解した上で、私はやはり温泉を楽しみたいと思います。日本温泉協会によると、温泉の効果にはさまざまなものが考えられます※2。まず、温泉そのものの効果とそれ以外の効果に分けられます。温泉そのものの効果は、入浴による効果と温泉ならではの効果があります。入浴による効果は、熱いお風呂に入る効果のことで、血行が良くなり身体が温まる、血管が拡張し血圧が低下する、熱いお湯の刺激で鎮痛効果がある、などです。温泉ならではの効果は、温泉の泉質から来るもので、天然温泉水に溶け込んでいるミネラルや電解質、そしてお湯の酸性度などによる影響です。温泉以外の効果としては、温泉には仕事や日常生活から離れて出かけることになるので、非日常のひとときを味わったり、旅行や食事を楽しんだり、リラクゼーションの効果などです。
上記の効果のうち、私自身は温泉でどれを一番楽しんでいるかと考えてみると、温泉そのもの以外の精神的なリラクゼーション効果が一番大きいように思います。それでは、温泉旅行から温泉をはずしても良いか、というと、温泉がないのであれば、別にわざわざ出かける意味がないような気がします。つまり、温泉旅行そのものは、温泉や食事、行楽の個々の楽しみすべてがまとまっているので楽しいのでしょう。早くパンデミックがおさまって、温泉旅行を楽しみたいものです。それまでは、家のお風呂に入浴剤を入れて疑似温泉で楽しみましょう。
※1:高齢者の入浴事故はどうして起こるのか?-特徴と対策 東京都健康長寿医療研究センター 研究所NEWS No.184
※2:温泉と健康について | 日本温泉協会 (spa.or.jp)
(2021/01/27 08:08:14)