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その14 下半身の筋力強化:バレトンがおすすめ
私は医者という仕事柄、患者さんに健康のアドバイスをするので、自分も健康維持には十分気を付けているつもりです。ところが、やはり寄る年波には勝てず、最近下半身のおとろえを感じるようになってきました。まず一つ目は、あしがしばしば攣るようになってきたことです。ここに「あし」と書いたのは、脚にも足にも起こるからです。いわゆる「こむら返り」と呼ばれる下腿またはふくらはぎ(これは脚の一部)が攣ることが多いのですが、足先にキュッと力を入れたり足の向きを代えたりする場合に足指が攣ることも割とあります(こちらは足)。おとろえを自覚している二つ目は、ワンコを抱いたり大きめの荷物を持ったりしながら階段の上り下りをする際に、体がよろけたりして転びそうになることです。こちらはバランス力や体幹・下肢の筋力低下によるものでしょう。
一つ目のこむら返りは医学用語では有痛性筋痙攣と呼ばれ、筋肉が異常に収縮し戻らなくなった(痙攣)状態を指します※1。筋肉は両端が腱と呼ばれる硬い筋のような組織になっていて、腱の先が骨や関節にくっついています。筋肉を縮めると腱が引っ張られて、関節で手足が曲がったり伸びたりする仕組みになっています。筋肉には、筋紡錘と腱紡錘という、筋肉の伸び縮みを感じ取るセンサーが備わっています。筋紡錘は筋肉内に存在し、筋肉が伸びすぎないようにコントロールしており、腱紡錘は腱内に存在し、腱が伸びすぎないように-すなわち筋肉が縮みすぎないようにコントロールしています。腱紡錘の働きが低下すると筋肉が異常に収縮し、痙攣をおこした状態になります。これがふくらはぎに起こったのがこむら返りです。腱紡錘の機能低下の原因の主なものには、カルシウム・カリウム・マグネシウムなどのミネラルバランスの乱れ、脱水気味などの水分不足、冷えなどの循環不良などがあります※2。私の場合には、冬の室温低下や夏のクーラーで脚が冷えた場合に起こることが多いようです。
対策としては、筋肉をストレッチしてほぐすことです。そうすることによって、血行が改善し、攣りにくくなります。直接的には下腿・ふくらはぎのストレッチ、すなわち準備運動などで定番の、アキレス腱を伸ばすストレッチをすることです。これは同時にふくらはぎのストレッチにもなります。さらに下半身の筋肉強化もしたければ、大きな筋肉の筋肉量を増やすトレーニングも行うと、身体の代謝率も上がり、より健康的になります。フィジカルトレーナーの中野氏によると、具体的な運動としてはスクワットやヒップリフト、レッグカールなどがあります※3。運動量としては、20回x2,3セットすることがお勧めだそうですが、私が実際にやってみるとかなりきつい運動です。中野氏によれば、強めの運動を行うことで筋肉に軽度の傷ができ、その傷が修復される時に筋肉量が増すので、後から筋肉痛を感じるようなきつめの運動がお勧めということです。
必要な筋トレの内容は分かりましたが、より楽しく運動できる方法として私はバレトンというプログラムを思い出しました。バレトンとは、ニューヨーク発祥のバレエとフィットネス、ヨガを組み合わせた有酸素運動です。私が愛用しているフィットネスサイトにバレトンのプログラムがいくつかあり、これは足や足指の筋肉を含めた下半身の筋力増強に役立ち、また体幹やバランスのトレーニングの要素もあります。準備運動は足指や足底のストレッチから始まり、フィットネスのパートではスクワットやランジなどの大きな筋肉を使う運動が組み合わされます。個々の動きは8回や12回繰り返し行いますが、音楽のリズムに合わせるので、呼吸をしながら楽しく動くことができます。バレエのパートでは、脚や手をバレエの振り付けのように動かすわけですが、インストラクターから、「ここは素早く動かして」「ここはゆっくり軽やかに」などと指示が入ります。私は今までバレエを習った経験はありませんが、脚をゆっくり上げ下げするためには、見た目よりもかなり筋肉を使わなくてはいけないことを実感しました。バレリーナの重力を感じさせない優雅で軽やかな動きは、実は筋力がとても必要な動きなのでしょう。バレトンで鍛えれば、私の二つ目の問題のバランス力や体幹の筋力も鍛えられると思うので、一挙両得です。それまでは階段の手すりを持って安全第一でいきたいと思います。
※1:筋痙攣、MSDマニュアル プロフェッショナル版 2016年
※2:こむらがえりはなぜ起こる サワイ健康推進課
※3:下半身に筋肉をつけると「太らない」「疲れない」 中野ジェームズ修一著、大和書房 2013年
(2020/10/30 08:25:44)