メディカルミッション

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その32 味覚障害と嗅覚障害
その31 ロコモティブシンドロームとその予防・対策
その30 私が決める私自身の介護
その29 清水選手『奇跡のレッスン』を見て
その28 健康寿命とシニアの体力テスト
その27 腰痛対策:骨盤を立てて座る
その26 セカンドライフの過ごし方
その25 誰にでも老化は来る
その24 スポーツ時の暑さ対策
その23 マインドフルネス
その22 コロナワクチン接種開始
その21 ネット依存、スマホ依存
その20 体年齢測定のしくみ
その19 目の健康をチェック!
その18 温泉は健康に良い?悪い?
その17 お肌ケア
その16 肩こりのツボマッサージ
その15 西洋医学がだめなら東洋医学はどうですか?
その14 下半身の筋力強化:バレトンがおすすめ
その13 シニアのスポーツ:私の5カ条
その12 インターネットでワークアウト
その11 夢のお告げ または 記憶のフィルタリング
その10 患者へのアドバイスの伝え方
その9 人間の宿命、腰痛とその対策
その8 ニュースとデマと現実と:新型コロナウイルス感染によせて
その7 寝る前ヨガ
その6 新・ウォーキングの常識
その5 ゴルフ肘、テニス肘
その4 良い姿勢の効能
その3 簡単で効果的なダイエット
その2 フットケア、私の場合
その1 体調を崩したあと、改めて健康に感謝!
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その32 味覚障害と嗅覚障害

先日早起きしなければいけない予定があり、起き抜けに朝食を急いで食べました。普段よりかなり早い時間に無理やり起きたので食欲が湧きません。そして食事もほとんど味がしません。味のしないパンをもぐもぐと噛んで、コーヒーで流し込みましたが、味のない朝食は苦痛に感じられました。幸い昼食までには体調も整い、味覚も戻りました。けれども、「もし食べ物の味が分からない状態が続いたら」と思うと、普段はあまり実感しないけれど、食事を味わって食べられることは有難いと感じました。

味覚は、舌や口腔粘膜に存在する味蕾と呼ばれる組織にある味細胞で知覚します。知覚できる味は、甘味、旨味、塩味、酸味、苦味の5種類です。毒や腐った食品などは、酸味や苦味が強く、生命への警告信号となるので、これらの味覚に対しては薄い濃度でも鋭敏に感じることができます※1。一方、甘味や塩味に対する感受性は比較的鈍くなっています。そして、酸味や苦味は比較的不味く、甘味や塩味は美味しく感じるそうです。危険な食べ物は避け、生命維持に必要な栄養を進んで取れるような仕組みになっているのですね。
 食べ物の味には上に挙げた5種類の味以上にもっとバラエティーがあるようにも思えますが、それは味もしくは風味というものは、純粋な味細胞による知覚だけではなく、嗅覚や食感、温度、さらには体調や心理的な状態などいろいろな要素が影響して、全体的に味わえるようになっているから、のようです。冒頭の話で、私が早起きをして朝食の味を感じなかったのは、まさに体調が整っていなかったからだと思われます。

さて、味蕾の味細胞が知覚した味に関する情報は、そこから顔面神経、舌咽神経、迷走神経などを介して脳に伝えられます。したがって、この経路や脳に障害があると、味覚障害を来たしえます。一時的ではない疾患としての味覚障害の原因は次のようにいろいろなものがあります。亜鉛欠乏性、感冒後、全身疾患性、薬剤性、心因性、そして原因が明らかでない特発性などです※2。治療は、原因が特定されればそれに応じて行われます。亜鉛欠乏というのは、亜鉛が不足して味蕾の味細胞の再生が遅れることによって、味覚障害が生じるものです。味蕾は10日間ほどで新しく入れ替わるというように、比較的短い命となっています。血液検査をして血清亜鉛値が低ければ亜鉛を投与して治療しますが、血清値が正常の場合でも亜鉛の治療を行って味覚障害が改善することもあるそうです。また、加齢により味覚機能が低下することも一般的に見られるのですが、実際歳を取ると味蕾の数や機能が減少することが分かっています。それに加えて高齢者ではいろいろな疾患があったり、薬を飲んでいたりすることが多いので、若い人よりも味覚障害の症例が多くなっています。
 感冒後の味覚障害は、感冒、つまり風邪による鼻炎などの影響でにおいが分からなくなるという嗅覚障害が起こり、その影響で味も分からないと感じる、広義の風味障害が引き起こされている場合が多いそうです。実際、味覚障害そのものの検査の結果が正常範囲内であっても、本人は味覚障害と感じることが結構あるようです。確かに鼻をつまんでものを食べると味は感じにくいですね。苦い薬を飲むには鼻をつまんで飲み込むと味を感じにくい、ということもあります。

次に味覚障害と関係のある嗅覚障害についてですが、においは、鼻腔の奥にある嗅裂と呼ばれる部位の嗅神経細胞が感知し、その情報が脳に伝えられます。従って、嗅神経細胞から脳までの経路に障害があると嗅覚障害になりえるのですが、実際はいろいろな鼻の疾患が原因となることが多いようです。嗅覚障害の原因は、慢性鼻疾患が大多数を占め、慢性副鼻腔炎が5割、感冒後が2割となっています※3
 新型コロナ感染症でも、味覚障害や嗅覚障害で発症したり、後遺症としてこれらの障害が残ったりすることが話題になりました。一般の感冒後におこる風味障害とはタイミングが違って、初発症状や唯一の症状であることもしばしばです。そのメカニズムはいろいろ研究されていますが※4、これから明らかにされることと思います。
 さて嗅覚障害の治療は、やはり原因疾患の慢性鼻疾患などの治療ということになりますが、外国ではいくつかのにおいをかぎ分ける嗅覚訓練も行われているそうです。


※1:味覚の生理学 I. 味覚生理学概論 河村洋二郎 調理科学 18(4): 237-243, 1985
※2:味覚障害の基礎と臨床 任智美ら 口咽学 30(1): 31-35, 2017
※3:味覚・嗅覚のメカニズムとその障害 和田昌士 IRYO 58(9): 528-530, 2004
※4:新型コロナウイルス感染症と嗅覚障害 上羽瑠美 日鼻誌 60(1): 59-60, 2021

(2022/08/25 14:21:28)

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