メディカルミッション

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 過去ログを読む(クリック)
その31 ロコモティブシンドロームとその予防・対策
その30 私が決める私自身の介護
その29 清水選手『奇跡のレッスン』を見て
その28 健康寿命とシニアの体力テスト
その27 腰痛対策:骨盤を立てて座る
その26 セカンドライフの過ごし方
その25 誰にでも老化は来る
その24 スポーツ時の暑さ対策
その23 マインドフルネス
その22 コロナワクチン接種開始
その21 ネット依存、スマホ依存
その20 体年齢測定のしくみ
その19 目の健康をチェック!
その18 温泉は健康に良い?悪い?
その17 お肌ケア
その16 肩こりのツボマッサージ
その15 西洋医学がだめなら東洋医学はどうですか?
その14 下半身の筋力強化:バレトンがおすすめ
その13 シニアのスポーツ:私の5カ条
その12 インターネットでワークアウト
その11 夢のお告げ または 記憶のフィルタリング
その10 患者へのアドバイスの伝え方
その9 人間の宿命、腰痛とその対策
その8 ニュースとデマと現実と:新型コロナウイルス感染によせて
その7 寝る前ヨガ
その6 新・ウォーキングの常識
その5 ゴルフ肘、テニス肘
その4 良い姿勢の効能
その3 簡単で効果的なダイエット
その2 フットケア、私の場合
その1 体調を崩したあと、改めて健康に感謝!
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その30 私が決める私自身の介護

コロナ禍の規制も次第に緩くなり、日常生活に戻る動きが大きくなっています。講演会や勉強会も、オンライン形式や感染対策をして限られた人数で行われたりしています。私も今年に入り、「認知症のリアル」という題で認知症診療に関する講演を2回行いました。まず2月に千葉県保険医協会主催の講演会があり、対象は協会会員関連の医師・歯科医師・介護関係の方々でした。3月の講演は佐倉市役所高齢者福祉課主催で、一般市民の方々に来てもらいました。認知症の基礎から始まり症例の紹介や対策法などをまとめ、自分で言うのもなんですが、それぞれの参加者に分かりやすいと好評でした。
 今回の講演を準備する際に、私はもう一度日本神経学会が監修した「認知症疾患診療ガイドライン2017」を読み直しました。私の講演の中でも紹介しましたが、このガイドラインの治療総論冒頭には、認知症の「診断後支援」が必要であると明記され、他の国の例ですが具体的な支援方法が列記されています。これまで認知症に関する医療は「早期診断と治療導入」を重視していましたが、むしろ「診断後の支援」へと方向転換が示されました。具体的には、疾患の理解や症状に対処する方法を指導する、コミュニティへのつながりを維持するなど数項目あり、最後の項目が「自分の展望で自分の介護のあり方を計画することを支援する」となっています。
 明らかに認知症と診断される場合、特にアルツハイマー型認知症の場合には、すでに認知症が軽度から中等度進行してしまっていることが多いので、果たして本人に「自分の介護のあり方を計画する」というのができるのだろうか、と私は疑問に感じました。典型的な認知症の場合には、本人の病識があまりないか正確に把握できていないことが多く、「自分で全部できている」「介護は必要ない」と主張することが多いからです。でも逆に考えれば、認知症になるもっと前の段階で、理解力・判断力が十分にある間に、自分の希望とする介護のあり方を計画し、身近な人に知ってもらっておくことは重要なことかも知れません。

そこで今回、私は自分の介護について計画してみることにしました。実際に考え始めてみると、介護と言うものは、立場によって希望内容がかなり違うことに気が付きます。自分が医師の立場で高齢者の患者やその家族にアドバイスしたり、自分の親の場合を考えると、できるだけ安全で安心なケアが受けられるようにと、早めで十分な介護を考えます。ところが、いざ自分の介護となると、介入はできるだけ最小限にして、自分の自由が利く方が良いように思ってしまいます。これは病気の治療の場合と違う点だと思います。他の病気であれば、治療法や手術法などは病気の状態に合わせて最良のものが良いので、立場の違いはあまり考えません。けれども自分の介護に関しては、自分はまだ関係ない、できるだけ世話になりたくないと思わず感じてしまいます。認知症診療の第一人者で、長谷川式認知症スケール考案者の長谷川和夫先生も、患者やその家族には早期からデイサービスに行くことを勧めていました。ところが自らが認知症になりデイサービスを体験すると、感想を次のように述べていました※1。憮然とした表情で、ポツリと「何がしたいかを聞いて欲しい」と。私もこの意見に同感します。長谷川先生は、比較的お元気なうちは主に奥様と娘さんから介護を受け、最終的には奥様と施設に入居されて、昨年逝去されました。
 私が自分の介護について考える際に重要なことは2点あります。1つ目はできる限り自分の好きなようにしたい、ということで、もう1つは自分の子供たちにはできるだけ負担をかけたくないということです。もし高齢になっても認知症がない、または程度が軽ければ、自分の家で過ごして、ヘルパーなどのサービスを受けることで暮らしていきたいと思っています。モデルとしては、「こんな夜更けにバナナかよ」の鹿野さんのように、訪問介護や訪問看護を使って自宅で何とか生活したいです※2。年相応の認知機能障害であったり、IADL(instrumental activity of daily life、手段的日常生活動作、家電の操作や料理・洗濯・掃除などの家事一般、金銭管理や服薬管理など)の障害だけが主であれば、金銭管理だけは身内にお願いしたいですが、あとは家事の代行や食事の宅配などでしのぎたいと思います。
 その後認知症状が進んでADL(activity of daily life、基本的日常生活動作)にも障害がかなり出てきた場合には、私自身のことであってもさすがに施設入居も考えなければいけないと思います。ADLは、移動、着替え、整容、食事、入浴、排泄など自分自身のケアです。このうち、特に移動、食事、排泄に介助が常時必要であれば、施設入居が適切でしょう。実際、自分自身も施設でのケアに違和感がなくなっていることと思います。多分、最後の何年かは施設でお世話になることだろうと思います。こんなふうに自分の最期を想像すると、なんだか切ないですね。


※1:NHKスペシャル 認知症の第一人者が認知症になった 2020年1月11日放送
※2:こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち 渡辺一史著 文春文庫 2013年

(2022/04/04 21:30:10)

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