メディカルミッション

時をかけるおばあさんたちTime Travelling Old Ladiesfollow us in feedly

 過去ログを読む(クリック)
その31 高齢者の転倒・骨折
その30 高齢者の頻尿
その29 未来の介護
その28 認知症、最近の動向
その27 高齢者の難聴:補聴器と人工内耳
その26 地域の認知症高齢者
その25 高齢者の下腿浮腫
その24 便秘対策:腸活で予防し、下剤で治療する
その23 認知症による行方不明
その22 訪問診療患者語録
その21 高齢者の不眠とメラトニン
その20 認知症のミニ知識④ アルツハイマー型認知症 治療およびケア
その19 認知症のミニ知識③ アルツハイマー型認知症 研究の歴史
その18 認知症のミニ知識② アルツハイマー型認知症の病期分類 FAST(Functional Assessment Staging)
その17 認知症のミニ知識① 長谷川式認知症スケール
その16 母親と息子の絆
その15 バーチャル認知症外来
その14 高齢者の熱中症リスク
その13 高齢者世帯の認知症介護
その12 認知症を予防するには
その11 廃用症候群と四肢の拘縮
その10 記憶のしくみ:アメフラシから人間まで
その9 メンタル症状と認知症
その8 デイサービスに行く?行かない?
その7 認知症のご近所トラブル
その6 「認知症のリアル」のエッセンス
その5 お盆の看取り
その4 高齢者の幼児返り
その3 独居で介護サービスを受け入れた暮らし
その2 独居老人が認知症になった時
その1 時をかけるおばあさんたち
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その30 高齢者の頻尿

私たちが診る高齢者の患者では頻尿を訴える人がしばしば見られます。高齢者施設の入居者も多いので、施設の職員などから頻尿で困っていると報告を受けることもあります。
 頻尿と言っても詳しい症状はさまざまなので、まずもっと詳しく話を聞いて、程度を把握し、原因を推測します。日中の頻尿なのか夜間に多い夜間頻尿なのか。1日何回くらいトイレに行くのか。トイレに行く度に排尿はしっかりあるのか、それともあまり出ないのか。頻尿以外に、排尿時痛や違和感、血尿などの症状はあるのかどうか。飲水量が多ければ当然多尿や頻尿になるので、水分摂取量も確認します。また夜間頻尿の場合には、不眠や浅眠が原因でトイレに行く回数が増えている場合もあるので、睡眠状態も確認します。
 泌尿器専門のドクターからは、まず排尿日誌をつけて排尿回数や尿量の記録をつけることが重要だと勧められています※1。このデータによって、多尿や頻尿があるかどうか、1回尿の量が多いか少ないか、また夜間頻尿のタイプかどうかなどが分かります。但し、高齢者や認知症のある人では、こういうデータがなかなかうまく取れない場合も多いと思います。

一般的に、高齢者では生理的に頻尿をきたしやすい状態になっています※2。加齢により膀胱の機能的な容量は低下し、また膀胱収縮に関係する神経は亢進していることが分かっています。夜間の多尿や頻尿を訴える人もしばしばいますが、夜間の尿量を抑える抗利尿ホルモンの分泌は若い人よりも低下しています。さらに高齢者では睡眠が浅く、途切れやすいので、結果的に夜間目が覚めやすく、トイレに行く回数も増えがちです。排尿状態を詳しく聞き取ると、特に病的な状態ではなく、生活上の注意をいくつか守ってもらうと改善することが結構あります。アドバイスする注意点としては、水分を取りすぎない、塩分を控える、適度な運動をするなどです※1

さて、頻尿の原因となる病気にはさまざまなものがあります。まず高齢者では尿路感染症をきたすことがしばしばあり、この場合には頻尿、熱発、残尿感、排尿時痛などが主な症状です。尿検査をして細菌感染症の所見があれば、抗生剤で治療を行うことになります。
 腎臓や膀胱の病気や糖尿病などの全身疾患で多尿や頻尿をきたすこともよくあります。また心不全や腎不全、低栄養などで下肢などにむくみがあると、就寝時臥床することで心臓に戻ってくる血流量が増加するので、その結果夜間頻尿になりがちです。そのほか高血圧、肥満などでも頻尿をきたしえます。一度全身的な検査を行い、それぞれの病態に従って病気をコントロールすることが重要です。一方、利尿剤などの薬の影響で多尿や頻尿をきたしやすくなっていることもあり、服用のタイミングを工夫して夜間より日中に排尿量が多くなるように調整したりします。
 男性の場合には、一般的に高齢になると前立腺肥大症をきたしている可能性が高いので、まだ泌尿器科を受診したことがなく、頻尿やそれ以外の排尿障害を訴える場合には、一度泌尿器科受診を勧めます。泌尿器科では、前立腺のエコー検査以外に残尿検査や前立腺癌のスクリーニングなども行えるので、やはり専門科受診は必須だと思います。

私たちが診ている高齢者の患者では認知症の人も多く、著しい物忘れやトイレへのこだわりが強くて頻尿のような状態になっている場合もあります。例えば、トイレに行って5分もたたないうちに行ったことを忘れてしまい、「トイレに行きたい」と何度も訴えたり、「トイレに行かなくちゃ」と半ば強迫観念のように思い込んでいて、思考がトイレから離れられなくなっていたりすることがあります。何か他のことに集中している時にはトイレに行くことも忘れてしまっていたりするので、膀胱や排尿自体の問題ではなさそうと見当がつきます。

また、急に尿意を催して我慢できなくなるという尿意切迫感と頻尿がある状態を過活動膀胱と呼びます。さらに失禁を伴うことも伴わないこともあります。原因としては、神経疾患や尿路感染症、残尿が多くなる泌尿器科的な疾患などの場合があるので、これらをまず検査して必要な治療を行い、これらがない場合には、行動療法や薬物療法で治療することがガイドラインに明記されています※3。治療薬としては長年抗コリン薬(べシケア、ウリトスなど)が使われており、膀胱の過剰な収縮を抑え、尿意切迫感や頻尿などを改善する働きがあります。一方で、口内乾燥や便秘などの副作用があります。最近は口内乾燥の副作用が少ない、β3アドレナリン受容体作動薬(ベタニス、ベオーバ)も開発され、使用されています。


※1:夜間頻尿.com | 夜トイレが多い まずは生活習慣の改善から水分の摂り方と夕方の軽い運動を (yakan-hinnyo.com)
※2:高齢者夜間頻尿の病態と対処 青木芳隆ら 日老医誌 50:434-439, 2013
※3:過活動膀胱ガイドライン 山口脩ら 日排尿会誌 16(2):225-252, 2005

(2022/04/04 21:27:37)

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