時をかけるおばあさんたちTime Travelling Old Ladies
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その18 認知症のミニ知識② アルツハイマー型認知症の病期分類 FAST(Functional Assessment Staging)
アルツハイマー型認知症の進み方については、FASTと呼ばれる国際分類があります。これは認知機能が正常からアルツハイマー型認知症の最終段階までを7段階に分類し、それぞれに特徴的な症状も日常生活に即した分かりやすい記述となっています。
ステージ1は正常で、主観的および客観的に認知機能低下がない状態です。
ステージ2は年齢相応で、物の置き忘れを訴えたり、単語がすぐに出なかったりします。
ステージ3は境界状態で、熟練を要する仕事で認知機能低下が同僚によって認められる、新しい場所に旅行することは困難な状態です。
ステージ4からは認知症となります。
ステージ4は軽度のアルツハイマー型認知症で、夕食に客を招く段取りをつけたり、家計を管理したり、買い物をしたりする程度の仕事でも支障をきたします。
ステージ5は中等度のアルツハイマー型認知症で、介助なしでは適切な洋服を着ることができない、入浴させる際になだめすかして説得することが必要なこともあります。
ステージ6はやや高度のアルツハイマー型認知症で、不適切な着衣が見られ、入浴を嫌がり、トイレの水を流せなくなったり尿便失禁が見られたりします。
ステージ7は高度のアルツハイマー型認知症で、言語機能の低下(しゃべれる言葉が数語から1語に減ってきます)、歩行能力の低下、ついで着座能力の低下、笑う能力の喪失、と進み、昏迷および昏睡となって最終的には死に至ります。
もう少し詳しく説明すると、ステージ4 軽度のアルツハイマー型認知症では、記憶障害、特に短期記憶障害が目立ってきて「何度も同じことを言う、聞く」という症状が出てきます。ご家族が同居または近くにいる場合には、このあたりのタイミングで病院を受診することが多いです。しまい忘れや置き忘れも多くなり、薬やお金の管理もうまくできなくなります。料理で失敗してお鍋を焦がしたり、味付けが変だったり、買い物で同じものを何度も買ったりします。この段階では、家族などが薬や金銭の管理をしたり、家事も誰かが見守ったりして、もし本人が失敗しても安全なことだけ任せるようにすると良いと思います。この期間は、平均2年間ほどです。
ステージ5 中等度のアルツハイマー型認知症になると、自分の身の回りの日常生活でも支障が出てくるので、声掛けや見守りなどの介助が必要になってきます。季節に合った服を自分で選べなくなり、夏なのに何枚も着込んでいたりします。入浴も忘れたり、嫌がったりします。声掛けや介助を素直に聞いてくれれば良いのですが、理解力も低下してきているので、介護に対する抵抗が見られたり、嫌なことに対して声を荒げたり、暴力が出たりすることもあります。その他、物盗られ妄想やいない人が見えるなどの幻覚、昼夜逆転や徘徊などといった異常行動もこの時期にしばしば見られます。この中等度の時期は1年半ほどです。
ステージ6とステージ7の高度のアルツハイマー型認知症では、尿便失禁が見られたり、言語能力が著しく低下してコミュニケーションを取るのが困難になってきます。この段階では介護の負担も相当重くなるので、高齢の家族がケアするのはかなり大変になります。何人かの家族でケアをするか介護サービスを充実させる、または施設でのケアが適切でしょう。
(2021/01/28 05:02:57)